第9回: 社員が辞めない会社の秘密 – DXと働き方改革の関係
- 樋口 理一
- 2月3日
- 読了時間: 7分
「人が辞める理由」を考えたことがありますか?

「また辞めてしまった...」 「せっかく育てたのに...」 「次の人材を探さなきゃ...」
中小企業の経営者なら、一度は経験したことがある悩みではないでしょうか。
人手不足が深刻化する今、「採用」よりも「定着」の方が重要になっています。なぜなら、採用コストよりも、教育して戦力になった社員が辞めることによる損失の方が、はるかに大きいからです。
前回までで、生成AIの活用についてお伝えしました。今回は、DXと働き方改革の関係、そして「社員が辞めない会社」を作るためのヒントをお伝えします。
データが示す現実:若手は「働き方」で会社を選ぶ
まず、データを見てみましょう。
マイナビの調査(2024年)によると、20代の転職理由のトップ3は:
給与への不満(28.3%)
働き方への不満(24.7%)
人間関係への不満(18.9%)
注目すべきは、「働き方への不満」が2位に入っていることです。
では、「働き方への不満」とは具体的に何でしょうか?
テレワークができない
無駄な会議や資料作成が多い
残業が多い(しかも、非効率な業務による残業)
アナログな業務が多く、時代遅れを感じる
有給休暇が取りにくい
つまり、DXが進んでいない会社は、若手に敬遠されるのです。
「アナログな職場」が若手を遠ざける

想像してみてください。
面接に来た若手が、オフィスを見学して何を感じるでしょうか?
パターンA:アナログな会社
山積みの書類
FAXが現役で稼働
ホワイトボードに手書きの予定表
社員が紙の資料を探し回っている
「これコピーしておいて」という指示
パターンB:デジタル化された会社
整理された清潔なオフィス
社員がノートPCやタブレットでスマートに仕事
大型モニターでビデオ会議
スケジュールはデジタルで共有
必要な情報はすぐに検索できる
あなたが若手なら、どちらで働きたいですか?
DXが働き方を変える5つのポイント
では、DXはどのように働き方を改善するのでしょうか。
ポイント①:時間と場所の柔軟性
クラウドツールを導入すれば、オフィスにいなくても仕事ができます。
子供の送り迎えの日は在宅勤務
台風の日は無理に出社しない
取引先訪問の前後に、カフェで作業

こういった柔軟な働き方が可能になります。
「うちは製造業だから、現場がメインで無理」という声もあるでしょう。でも、事務作業や営業、設計などの部門だけでも、柔軟に働けるようになれば、そこで働く社員の満足度は確実に上がります。
ポイント②:無駄な業務の削減
DXによって、無駄な業務が削減されます。
手書きの報告書 → デジタル入力で検索も簡単
押印のための出社 → 電子承認
会議のための資料印刷 → 画面共有
在庫管理の手書きメモ → デジタル管理
これらが削減されれば、社員は本来やるべき仕事に集中できます。無駄な残業も減ります。
ポイント③:情報の透明性
クラウドで情報を共有すれば、「知らなかった」「聞いてない」がなくなります。
誰が今何をやっているか見える
プロジェクトの進捗が共有される
過去の経緯もすぐに確認できる
この「透明性」が、社員の安心感とチームワークを生み出します。
ポイント④:スキルアップの機会
DXツールを使いこなすことで、社員のITスキルが向上します。
これは社員にとって、市場価値の向上を意味します。「この会社で働いていると、スキルが身につく」と感じれば、簡単には辞めません。
ポイント⑤:成果が見えやすい
デジタル化により、業務の成果が可視化されます。
売上データがリアルタイムで見える
業務改善の効果が数字で示される
個人の貢献が明確になる
これが、社員のモチベーション向上につながります。
実例:DXで離職率が半減した建設会社
東京都内のある建設会社(社員25名)の事例をご紹介します。
この会社は、3年前まで深刻な人手不足に悩んでいました。せっかく採用しても、1〜2年で辞めてしまう。特に若手の定着率が低く、平均年齢が年々上がっていました。
社長が社員にヒアリングしたところ、以下のような不満が出てきました:
「現場写真を整理するのに毎週金曜の午後がつぶれる」
「書類作成が多すぎて、現場管理に集中できない」
「社長の承認待ちで仕事が止まることが多い」
「有給を取りたいけど、引き継ぎが大変で取りづらい」
そこで、段階的にDXを進めました。
導入したもの:
クラウド型の現場管理システム
スケジュール・タスク管理ツール
電子承認ワークフロー
ビデオ会議システム
チャットツール
2年後の変化:
離職率が年間20% → 10%に半減
若手社員から「他社より働きやすい」という声
新卒採用の応募者が3倍に(「IT化が進んでいる」という評判)
社員の平均残業時間が月20時間削減
有給取得率が40% → 70%に向上
社長は「DXは業務効率化のためだと思っていたけど、一番の効果は社員が辞めなくなったこと。採用コストも教育コストも激減した」と語ります。
「働き方改革」は大企業だけのものじゃない
「働き方改革って、大企業がやることでしょ?」
そんな風に思っていませんか?
むしろ、中小企業こそ働き方改革が重要です。なぜなら:
大企業より人材獲得が難しい
給与や知名度で勝てない中小企業は、「働きやすさ」で差別化するしかない
一人の離職の影響が大きい
社員20人の会社で1人辞めるのは5%の戦力ダウン。大企業より深刻
小回りが利く
社長の決断一つで、すぐに変えられる。これは中小企業の強み
今日からできる「働きやすい会社」への第一歩
では、具体的に何から始めればいいのでしょうか。

ステップ1:社員の声を聞く(今週中)
まずは、社員が何に困っているか聞いてみましょう。
匿名アンケートでも、1on1ミーティングでも構いません。
聞くべき質問:
「一番時間がかかっている業務は?」
「無駄だと感じる業務は?」
「どんなツールがあれば便利?」
「理想の働き方は?」
ステップ2:一つだけ改善する(今月中)
全部をいきなり変えようとしないでください。
社員の声の中から、一番多かった不満を一つだけ改善しましょう。
例:
「書類探しに時間がかかる」→ クラウドストレージ導入
「承認待ちで仕事が止まる」→ チャットツールで迅速承認
「会議が多い」→ 定例会議を半分に削減
ステップ3:効果を確認して、次へ(3ヶ月後)
改善の効果を社員に確認しましょう。
「この変更、どう?」と聞くだけでいいんです。
良い反応があれば、次の改善へ。これを繰り返すだけです。
「お金をかけずに」できることもある
「DXにはお金がかかる」と思うかもしれません。
でも、お金をかけずにできることもたくさんあります。
お金をかけない働き方改革:
無駄な会議を減らす(30分 → 15分、週1 → 月1)
定時退社日を決める(毎週水曜は18時完全退社、など)
有給を取りやすくする(理由を聞かない、1時間単位で取得可能に)
フレックスタイム制の導入(コアタイムだけ出社)
リモートワークを部分的に認める(週1日だけでもOK)
これらは、制度を変えるだけ。コストはゼロです。
社員が辞めないことの経済効果
最後に、社員が辞めないことの経済効果を考えてみましょう。

社員が1人辞めると:
求人広告費:30〜50万円
採用活動の時間コスト:社長・幹部の時間
新人教育コスト:3〜6ヶ月分の給与 + 教育担当者の時間
戦力ダウンによる機会損失
合計すると、1人あたり300〜500万円とも言われています。
つまり、離職率が下がるだけで、年間数百万円〜数千万円のコスト削減になるのです。
DXへの投資は、これと比べれば、はるかに安いものです。
まとめ:DXは、社員のための投資
若手の転職理由の2位は「働き方への不満」。アナログな職場は敬遠される
DXで実現できること:柔軟な働き方、無駄な業務削減、情報の透明性、スキルアップ、成果の可視化
建設会社がDXで離職率半減、新卒応募者3倍、残業20時間削減を実現
中小企業こそ働き方改革が重要。小回りが利くのは強み
まずは社員の声を聞き、一つだけ改善することから始める
社員が1人辞めると300〜500万円の損失。DXは社員定着のための投資
DXは、業務効率化のためだけではありません。社員が「この会社で働き続けたい」と思える環境を作るための投資なのです。
次回は最終回、「5年後も生き残る会社になるために – DXロードマップの描き方」として、これまでの総まとめと、具体的な行動計画をお伝えします。
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